日本のDXを加速させるマイナンバーカードの実態とは?

交付開始から7年。
2023年2月時点で、申請件数は国民の7割を突破し
、多くの人がマイナンバーカードを取得しています。
しかし一体どのようなメリットがあるのか、
どのように情報が管理されているのか知らない方も
多いのではないでしょうか。
マイナンバーカードの実態について専門家に伺いました。

近年、迅速な行政手続や公平な社会保障制度を実現する観点から、DXが推し進められています。そんな中、DXの鍵を握るとも言われているのがマイナンバーカードです。そこで本記事ではマイナンバーカードの実態やセキュリティについて迫ります。

リアルでもデジタルでも
自分を証明できる1枚

「マイナンバーカードは、日本のDXの基盤となる非常に重要なツールです」と語るのは、サイバーセキュリティの第一人者である、慶應義塾大学環境情報学部の手塚悟教授です。

手 塚「マイナンバーカードには様々なメリットがありますが、本人確認が、リアルの空間でもデジタルの空間でもできるようになったのが画期的な点です。日本では今まで行政の手続をする時に、窓口で書類を手書きしてハンコを押して…と時間や手間をかけて手続を行なっていました。しかしマイナンバーカードがあればそれらがオンライン上で完結します。マイナンバーカードは自分を証明する、まるでデジタル上の実印のような存在。日本のDXを進める上で無くてはならない1枚です」

また本人確認書類として使えること以外にも、様々なメリットがあるといいます。

手 塚「役所に足を運ぶことなく近隣のコンビニエンスストアで住民票の写しなどを手に入れることができたり、新型コロナウイルスのワクチン接種証明書の交付ができたり、子育てなどに関する手続がオンラインでできたりと、利便性は高まっています。e-Taxでの確定申告の際も便利です」

世界最高水準の
セキュリティ対策

暮らしの中で活躍の場が広がっているマイナンバーカード。一方でその安全性に対して誤解を抱いている人がいまだ多いようです。

手 塚「マイナンバーカードは、日本の各領域のエキスパートが知恵をふりしぼって考えた、世界的に見ても非常に安全性が高いシステムで、不正に情報を引き出すのは非常に困難です」

マイナンバーカードの
情報管理に見られる誤解

マイナンバーカードの情報管理について気になる方も多いようです。

手 塚「自分の税や年金などの情報が、マイナンバーカードに入っているんじゃないかと思う方がいらっしゃいますが、実はマイナンバーカード自体にプライバシー性の高い情報は一切入っていません。例えば税金の情報であれば国税局が、年金の情報であれば日本年金機構など、特定の行政機関が情報を厳重に管理しています。マイナンバーカードに入っているのは、それぞれのデータベースにアクセスするための証明書の情報です。機密情報はバラバラに分散管理されているため、情報が芋づる式に漏洩することもありません」

また、システムと法律の二つの側面から安全性が守られているといいます。

手 塚「まずシステムを強固にすることで物理的に悪用できないようになっています。それに、個人情報保護法の特例を定めるものとして、より厳格な法律である、いわゆる番号利用法で使用範囲などが守られています。万が一悪用した場合は厳しい罰則が科されます」

国民みんなとともに
進化していく

近年は活用範囲がさらに広がっています。2023年5月からは一部のスマートフォンにマイナンバーカード機能(電子証明書)を搭載することが予定されており、将来的には運転免許証との一体化なども予定されています。

手 塚「マイナンバーカードは、作って終わりではなく、日本のみなさんと一緒に進化していくものだと考えています。みんなで知恵を出しながらより便利なものにしていければいいですね。また、今後マイナンバーカードの利便性がどんどん高まっていく中で、カードを持っていないとせっかくスマート化された手続が利用できないということも増えてくると思います。私としては、食わず嫌いをするより一度使ってみて判断してほしいと思っています」

マイナンバーカードを起点とした各種サービスは今後も増えていくことでしょう。将来的にはますます暮らしに欠かせない一枚になりそうです。

手塚 悟 教授

手塚 悟 教授

慶應義塾大学
環境情報学部・教授。
サイバーセキュリティの
第一人者として活躍し、
個人情報保護委員会委員、
情報ネットワーク法学会理事長などを歴任。